船員になるには Vol 2
「30歳で家が建つ」って、マジっすか!
さてさて、前回の「船員になるには Vol 1」では、当直ができる即戦力の船員になるために、船員教育機関(船の学校)で勉強したほうが望ましいってことを書きました。
前回は「当直」(船を運航する当番の資格って感じかな?)の観点から書きましたが、船の運航にはそのほかに、2つの条件をクリアしなければなりません。
一つめは船の「航行区域」(運航してもいい海域の範囲)と「総トン数」「主機関の出力」に応じた資格を持った乗り組み員が必要という事です。
分かりやすく言えば、陸上の運転免許でも、普通免許で大型バスが運転できないように、船もトン数が増えれば増えるほど、主機関の出力があるいは遠方を航海すればするほど、上級の「海技士免許」が必要になります。海技士免許には、1級から6級海技士まであります。
内航船のうち、標準的といわれる499トン型貨物船(1600トン積み)主機関馬力1,000PS。沿海区域を例にとると、船長(5級海技士(航海))、一等航海士(6級海技士(航海))機関長(6級海技士(機関))の資格を持った3人の乗組員が必要です。
二つ目は船員さんの労働時間の制約です。船員さんも陸上労働者と同じ「8時間労働」です。そのため、一日24時間を8時間で割ると甲板部・機関部それぞれ3人づつの乗組員が必要という事になりますが、機関部に関しては、船員法の規定で船舶職員法の人数が乗ればよいことになっていますので、1日16時間以上稼働する船は甲板部3人と機関部1人の最低4人の乗組員が必要という事になります。
ただし、船の仕事は「航海」だけではありませんので、実際には499トンクラスでは5人乗り組みがほとんどのようです。
では「海技士」資格はどうすれば取れるのでしょうか
詳しい話は省略しますが、船に無縁だった方が海技免許を取るためには、VOL1で書いたように、先ずは船会社に採用されて乗船し、乗船履歴をつける必要があります。
ざっくり、3年間の乗船履歴が必要です。
しかし、まったく未経験の方の募集はさほど多くないなかで、やはり、船員養成の専門機関で勉強するのが近道であり、採用と同時に手厚い待遇で迎えられます。
ちなみに、今回ご紹介する教育機関は、主に内航船員を養成する機関であり、大型外航船の幹部乗組員を養成する学校には、東京海洋大学や神戸大学、あるいは水産大学校のほか、全国にある商船高等専門学校などがあります。
外航船に乗りたい!って方は、そちらを検索してみてください。
中学校を卒業してから船の学校に進学する場合(国立編)
中学校卒業後、プロの船乗りになる専門教育をする教育機関があります。
いずれも国立の学校で、卒業すると高校卒業資格を得ることができますし、4級海技士(航海)と4級海技士(機関)両方の国家試験のうち筆記試験が免除になるという特典があります。
さらに、本科卒業後乗船実習科にすすめば、普通ならば3年かかる乗船履歴を6か月の乗船実習でクリアすることができますし、航海と機関両方の履歴を取得、免許を手にすることが可能となります。
北から順に
北海道にある 小樽海上技術学校
千葉県にある 館山海上技術学校
佐賀県にある 唐津海上技術学校
長崎県にある 口之津海上技術学校の4校があり、いずれもが国土交通省所管の国立学校で、授業料も安価に設定されています。
中学校を卒業してから船の学校に進学する場合(公立編)
また、水産高校に進学することによって海技士資格を得ることもできます。
中国地方では、島根県に2校と山口県に1校あり、それぞれ卒業すると5級海技士(航海)、5級海技士(機関)の筆記試験が免除になります。
島根県隠岐の島町にある 隠岐水産高校
島根県浜田市にある 浜田水産高校
山口県長門市にある 大津緑陽高校いずれの学校も全国から生徒が集まり、昨今では海技試験も高い合格率を示しています。
詳しくは、各校のホームページを確認してください。
船とは無縁の高校から船員をめざす場合
一般の高校を卒業した方や、一度社会に出た方でも比較的短期間で海技免許を取得できる教育機関があります。
北海道小樽市にある 小樽海上技術短期大学校
岩手県宮古市にある 宮古海上技術短期大学校
静岡県静岡市にある 清水海上技術短期大学校
愛媛県今治市にある 波方海上技術短期大学校の4校があり、海上技術学校同様に、国土交通省所管の国立学校で、授業料も安価に設定されています。
また、これらの学校は、2年間の在学中、乗船実習も含め、海技士の専門教育を集中的に実施する機関であって、卒業と同時に、4級海技士(航海)と4級海技士(機関)双方の筆記試験が免除となり、双方の海技免状を取得することが可能となります。
一度社会に出たけど、船乗りに転職したい!!
って方におすすめなのが、
一般社団法人海洋共育センター6級海技士短期養成科です。
一度社会にでたけど、「なんか違う」とか「やっぱり船乗りを目指したい」って方向けのカリキュラムで、最短10.5か月で6級海技士(航海)または(機関)の資格を取得することができますし、ハローワークで「受講指示」を受けると「公共職業訓練等」の制度が利用できます。離職後雇用保険受給資格のある方は、公共職業訓練等の指示を受けることによって、受講中に失業保険や技能手当等の受給が可能です。
既にたくさんの方がこの制度を使って海に漕ぎ出しています。
今回は大作でした(汗)
昨今は新型コロナウイルス蔓延の影響で、サービス業を中心にたくさんの失業者が発生したと報道されています。
内航船も鉄鋼メーカーの減産や自動車の減産などで一時的に輸送供給量が下がっていますが、こんな中でも内航船員不足は深刻です。
内航船員は「エッセンシャルワーカー」(社会になくてはならない職業)です。
日本のため、日本の産業のため、日本人のため、誇りをもって働く内航船員を、是非職業選択の候補にいれてみませんか。
(ぶっちゃけ、陸上の仕事に較べて給料もかなり高いですよ(笑))←小さな字で書いときました(笑)
追記!船員の給料とか待遇ってどうよ。
ぶっちゃけ、陸上と比べて給料がかなり高い!って書きましたが、どのくらい高いのかを大公開!
インターネットで船員の求人情報が公開
「船員求人情報ネット」されていて、この情報を見てから運輸局の船員職業安定所に申込をされる方が多いです。
陸上産業の20歳代後半と船員の20歳代後半の賃金を比較してみますと、政府統計による20代後半の平均年収が360~370万円に対し、船員求人情報ネットで調べてみた4級海技士を持った一等航海士で、月額賃金が40万円程度の募集が中心でした。
年収換算するとボーナスも含め500万円代後半~600万円程度となりますので、概ね同年代の1.5倍程度の年収になります。(もちろん様々なケースがありますので、あくまで一例です)
しかも、乗船中は個室と食事は無料、大半の会社では作業服や安全靴も支給されるうえ、休暇時の帰省旅費を負担する会社がほとんどです。乗船中お金を使う機会があまりなく、貯金も容易です。
中海連の岡本会長のキャッチフレーズは
「内航船員は30歳で家が建つ」!あながち大げさでないことがお分かりいただけるかと思います。
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