距離はマイル、速度はノット
2020/04/23 16:10:24 船のあれこれ
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いやぁ、どうもコロナコロナで気が滅入ってしましますね。
巷では「コロナ鬱」などというのも問題になり始めておりますが、皆さんどうぞお気を付けください。
おかれた状況の中で、何とかして気が晴れることを見つけることも必要です。
さて、今回のネタは船の速さと距離のはなしです。
画像引用:https://www.oceandictionary.jp/index.html
今更ですが、海上距離を表すのはマイル(海里)ですよね
船の世界ではあまりに当たり前すぎて、何をいまさらと思われる方も多いでしょうが、ここはひとつ復習のつもりで。1マイルがなぜ中途半端な距離である1,852mなのかもう一度おさらいです。
この距離は、赤道から北極点までの子午線の距離である10,000㎞÷90度÷60分≒1,852mがその根拠です。つまり、地球の表面距離の「1分」に相当する距離なのです。
ではなぜ、1分の距離を求める必要があったのかといえば、周辺に陸も見えない大海原では、自身のいる位置を求めるために、「何ノットでこっちの方向に何時間航海した」という情報だけで、地球上の自船の位置を大まかに求めることができます。(大航海時代の話ですが・・)
次に必要になるのが、「方向」ですが、これは地上が見えていれば「地文航法」となりますが、そうでなければ「天文航法」です。つまり、昼間は太陽を、夜には星を見つけて「セキスタント(六分儀)」で計測し、「天測歴」と「天測計算表」を使って自船の位置を割り出します。
現代の船ではまず出番はありませんが、以前お付き合いのあった海技試験官曰く、セキスタントが使えない航海士は航海士に非ずとのことでしたので、基本中の基本のようです。
では「何ノットで」というのはどうやって求めていたのかというと
船の速力をはかる装置を「ログ(測程儀)」といいますが、これも時代とともに変遷しています。
「ログ」っていうのは「木片」のことですが、最も初期には、船の先頭から木片を流し、船尾に到達した時間で速力を求めたオランダ東インド会社の船がその方法を用いたことから、ダッチマンズログと呼ばれ、その名残で、いまだに「ログ」という言葉が使われます。(船の世界は歴史を重んじます)
時代が進み、その後、木製の扇形の板に百数十メートルの測程索(ログライン)をしつらえた、「手用測程儀」(ハンドログ)が使用されるようになり、一定の長さごとに結び目(ノット) を作り、船から流して、一定時間に繰り出された結び目の数を数えることによって、速力を図っていました。
さらに時代が進むと・・
時代が新しくなるにつれ、画像にあるような近代的な機器が登場してきます。
回転子を曳航し、その回転数で速力を知るパテントログ、海中に暴露して、速力による水圧で計測するサルログなど、様々なものが開発されましたが、決定的なのは、いずれも「対水速力」であって、必ずしも正確な速力ではないという点です。
その後、オメガ・デッカ・ロランなど双曲線航法(電波航法)の時代が長く続きましたが、現在の主力はご存知の通り人工衛星を使った「GPS」(アメリカの衛星)航法です。
世界各国が自前の航法衛星システム(GNSS)衛星を構築しつつありますが、EUが構築中のガリレオを除き、大半は軍事用衛星を民生用に公開しているに過ぎず、いざ有事の際には「精度が意図的に落とされる」「使えなくなる」といったリスクもはらんでおり、やはり、天文・地文航法は航海士にとって必要なスキルのようです。