船員になるには Vol 2
2020/06/23 船員ドリーム
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「30歳で家が建つ」って、マジっすか!
さてさて、前回の「船員になるには Vol 1」では、当直ができる即戦力の船員になるために、船員教育機関(船の学校)で勉強したほうが望ましいってことを書きました。
前回は「当直」(船を運航する当番の資格って感じかな?)の観点から書きましたが、船の運航にはそのほかに、2つの条件をクリアしなければなりません。
一つめは船の「航行区域」(運航してもいい海域の範囲)と「総トン数」「主機関の出力」に応じた資格を持った乗り組み員が必要という事です。
分かりやすく言えば、陸上の運転免許でも、普通免許で大型バスが運転できないように、船もトン数が増えれば増えるほど、主機関の出力があるいは遠方を航海すればするほど、上級の「海技士免許」が必要になります。海技士免許には、1級から6級海技士まであります。
内航船のうち、標準的といわれる499トン型貨物船(1600トン積み)主機関馬力1,000PS。沿海区域を例にとると、船長(5級海技士(航海))、一等航海士(6級海技士(航海))機関長(6級海技士(機関))の資格を持った3人の乗組員が必要です。
二つ目は船員さんの労働時間の制約です。船員さんも陸上労働者と同じ「8時間労働」です。そのため、一日24時間を8時間で割ると甲板部・機関部それぞれ3人づつの乗組員が必要という事になりますが、機関部に関しては、船員法の規定で船舶職員法の人数が乗ればよいことになっていますので、1日16時間以上稼働する船は甲板部3人と機関部1人の最低4人の乗組員が必要という事になります。
ただし、船の仕事は「航海」だけではありませんので、実際には499トンクラスでは5人乗り組みがほとんどのようです。
では「海技士」資格はどうすれば取れるのでしょうか
詳しい話は省略しますが、船に無縁だった方が海技免許を取るためには、VOL1で書いたように、先ずは船会社に採用されて乗船し、乗船履歴をつける必要があります。
ざっくり、3年間の乗船履歴が必要です。
しかし、まったく未経験の方の募集はさほど多くないなかで、やはり、船員養成の専門機関で勉強するのが近道であり、採用と同時に手厚い待遇で迎えられます。
ちなみに、今回ご紹介する教育機関は、主に内航船員を養成する機関であり、大型外航船の幹部乗組員を養成する学校には、東京海洋大学や神戸大学、あるいは水産大学校のほか、全国にある商船高等専門学校などがあります。
外航船に乗りたい!って方は、そちらを検索してみてください。
中学校を卒業してから船の学校に進学する場合(国立編)
中学校卒業後、プロの船乗りになる専門教育をする教育機関があります。
いずれも国立の学校で、卒業すると高校卒業資格を得ることができますし、4級海技士(航海)と4級海技士(機関)両方の国家試験のうち筆記試験が免除になるという特典があります。
さらに、本科卒業後乗船実習科にすすめば、普通ならば3年かかる乗船履歴を6か月の乗船実習でクリアすることができますし、航海と機関両方の履歴を取得、免許を手にすることが可能となります。
北から順に
北海道にある 小樽海上技術学校
千葉県にある 館山海上技術学校
佐賀県にある 唐津海上技術学校
長崎県にある 口之津海上技術学校の4校があり、いずれもが国土交通省所管の国立学校で、授業料も安価に設定されています。
中学校を卒業してから船の学校に進学する場合(公立編)
また、水産高校に進学することによって海技士資格を得ることもできます。
中国地方では、島根県に2校と山口県に1校あり、それぞれ卒業すると5級海技士(航海)、5級海技士(機関)の筆記試験が免除になります。
島根県隠岐の島町にある 隠岐水産高校
島根県浜田市にある 浜田水産高校
山口県長門市にある 大津緑陽高校いずれの学校も全国から生徒が集まり、昨今では海技試験も高い合格率を示しています。
詳しくは、各校のホームページを確認してください。
船とは無縁の高校から船員をめざす場合
一般の高校を卒業した方や、一度社会に出た方でも比較的短期間で海技免許を取得できる教育機関があります。
北海道小樽市にある 小樽海上技術短期大学校
岩手県宮古市にある 宮古海上技術短期大学校
静岡県静岡市にある 清水海上技術短期大学校
愛媛県今治市にある 波方海上技術短期大学校の4校があり、海上技術学校同様に、国土交通省所管の国立学校で、授業料も安価に設定されています。
また、これらの学校は、2年間の在学中、乗船実習も含め、海技士の専門教育を集中的に実施する機関であって、卒業と同時に、4級海技士(航海)と4級海技士(機関)双方の筆記試験が免除となり、双方の海技免状を取得することが可能となります。
一度社会に出たけど、船乗りに転職したい!!
って方におすすめなのが、
一般社団法人海洋共育センター6級海技士短期養成科です。
一度社会にでたけど、「なんか違う」とか「やっぱり船乗りを目指したい」って方向けのカリキュラムで、最短10.5か月で6級海技士(航海)または(機関)の資格を取得することができますし、ハローワークで「受講指示」を受けると「公共職業訓練等」の制度が利用できます。離職後雇用保険受給資格のある方は、公共職業訓練等の指示を受けることによって、受講中に失業保険や技能手当等の受給が可能です。
既にたくさんの方がこの制度を使って海に漕ぎ出しています。
今回は大作でした(汗)
昨今は新型コロナウイルス蔓延の影響で、サービス業を中心にたくさんの失業者が発生したと報道されています。
内航船も鉄鋼メーカーの減産や自動車の減産などで一時的に輸送供給量が下がっていますが、こんな中でも内航船員不足は深刻です。
内航船員は「エッセンシャルワーカー」(社会になくてはならない職業)です。
日本のため、日本の産業のため、日本人のため、誇りをもって働く内航船員を、是非職業選択の候補にいれてみませんか。
(ぶっちゃけ、陸上の仕事に較べて給料もかなり高いですよ(笑))←小さな字で書いときました(笑)
追記!船員の給料とか待遇ってどうよ。
ぶっちゃけ、陸上と比べて給料がかなり高い!って書きましたが、どのくらい高いのかを大公開!
インターネットで船員の求人情報が公開
「船員求人情報ネット」されていて、この情報を見てから運輸局の船員職業安定所に申込をされる方が多いです。
陸上産業の20歳代後半と船員の20歳代後半の賃金を比較してみますと、政府統計による20代後半の平均年収が360~370万円に対し、船員求人情報ネットで調べてみた4級海技士を持った一等航海士で、月額賃金が40万円程度の募集が中心でした。
年収換算するとボーナスも含め500万円代後半~600万円程度となりますので、概ね同年代の1.5倍程度の年収になります。(もちろん様々なケースがありますので、あくまで一例です)
しかも、乗船中は個室と食事は無料、大半の会社では作業服や安全靴も支給されるうえ、休暇時の帰省旅費を負担する会社がほとんどです。乗船中お金を使う機会があまりなく、貯金も容易です。
中海連の岡本会長のキャッチフレーズは
「内航船員は30歳で家が建つ」!あながち大げさでないことがお分かりいただけるかと思います。
新型コロナウイルスにかかる支援策まとめ(6/19現在)
2020/06/22 09:52:31 お知らせ
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国土交通省では、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策(第1弾及び第2弾)及び令和2年度1次補正における活用可能な支援策をとりまとめ、公表してきていましたが、さきの国会で成立した2次補を受け、あらたに支援メニューを取りまとめ、国交省ホームページにアップされています。
内容が多岐にわたっていますので、詳細は下記のリンクからご確認下さい。
厳しい環境のなか、活用できるものは活用しましょう。
★★★内航貨物事業における支援メニュー(概要)★★★(国交省HP)
中海連に「アベノマスク」が来た
2020/06/09 16:12:27 センムのつぶやき
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中海連は「世帯」扱い(;^ω^)
今朝がた、中海連の郵便受けに「アベノマスク」が投函されていました。
たしか「世帯」に配布するのではなかったかな?
寄付を受け付けているところもあるようなので、死蔵させずに寄付します。
「船舶油濁損害賠償保障法(油賠法)」の手続きが必要です
2020/06/08 15:08:28 お知らせ
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「船舶油濁損害賠償保障法(油賠法)」が改正された以降、本年3月には国土交通省主催の説明会が各地で開催されるはずだったのですが、コロナ対策のため、説明会が中止となりました。
その後、十分な情報提供ができないまま、現在に至っていたのですが、今般、各保険会社の手続き準備などが整ったと行政から連絡がありましたので、このホームページにて概要をお知らせします。
中海連会員には、所属組合・支部あて詳細情報をお知らせすることとします。
なぜ「油防法」の手続きが必要なのかというと
ほとんどの船舶は「PI保険」に加入しています。
「PI保険」とは、端的に言うと海上版の「損害賠償保険」なのですが、今般改正された「2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(バンカー条約)」及び「2007年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約(ナイロビ条約)」に対応するため、国内法である「船舶油濁損害賠償保障法(油賠法)」が改正されました。
しかし、その改正内容は、これまで各保険会社と船社さんが契約していた従来の内容では法律を満足しないこととなりました。
そこで、2020年10月以降は、内航・外航問わず、タンカーも一般貨物船も問わず、新しい制度のPI保険に加入していることを確認した「証書」を受けることが求められ、船内に備え置かなければ、それ以降の航海が禁止されることとなりました。
これまで「燃料油による油濁損害」と「難破物除去損害」の補償契約が強制されていたのは、国際総トン数100トン以上の外航船に限られていましたが、これらを細分化して、次のように変更になります。
もう一度言います!内航貨物船も適用されます!
適用になるのは「国際総トン数1,000トン以上又は300トン以上の船舶」です。
外航船も内航船も適用になります。
数多ある「トン数」の種類でも、内航の世界で普段使う指標は「総トン数(G/T)」か、載貨重量トン数(D/W)」がほとんどで、なかなか「国際総トン数」は触れる機会が少ないと思いますが、今回使う「トン数」は「国際総トン数」です。この国際総トン数は、総トン数4,000トン以下の船舶は、ほとんどの場合総トン数より国際総トン数のほうが大きな数字になります。
ちなみに、199型貨物船の場合でも国際総トン数は300トンを超えるケースがほとんどです。
したがって、内航船のほとんどは適用になることに注意してください。
〇国際総トン数300トンを超える内航船は → 「条約証明書」(難破物)の取得が必要
〇国際総トン数1,000トンを超える内航船は → 「条約証明書」(難破物)+「条約証書」(燃料油)の取得が必要
詳しくはこちらをご覧くださいわが社の船の「国際総トン数」はどうすれば確認できるのか
さてさて、国際総トン数の確認方法ですが、
①たまたま「国際総トン数証書」を持っていた場合
こんな船は極めて少ないと思いますが、その場合は国際総トン数証書に書いてあるトン数です。
②国際総トン数証書なんてもってない場合(これが普通の内航船です)
この場合は、「総トン数計算書」中の「法第4条第2項の規定の例により算定したt」に記載されています。総トン数計算書は新造船のときや改測した時に船舶測度官が作成し、交付されます。船に積んであることも多いですね。
③「総トン数計算書」を紛失した場合
この場合には、中国運輸局海上安全環境部船舶安全環境課(082-228-8794)に電話して問い合わせて下さい。
④そもそも、「総トン数計算書」なんて持ってない場合
昭和57年以前に建造された船舶の場合にはこのケースがあり得ますので、同様に運輸局に問い合わせて下さい。
ということで、
詳しい情報は、所属組合にお尋ねいただければと思いますが、漏れ聞くところによると、一部の保険会社では手続きを代行して証書を取りまとめるところもあるようです。
早めに各社ご加入の保険会社にお問合せされるのも一考かと思います。
締め切り間際には混雑して、間に合わなくなる可能性もあります。
9月末日までに証書を船に積んでおく必要がありますので、十分余裕をもって手続きを進めて下さいね。
みなさまくれぐれも手続きお忘れなく!!
船員になるには Vol 1
2020/06/02 15:59:33 船員ドリーム
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時々「船員にはどうしたらなれるん?」と聞かれることがありますので、今回から何回かに分けて「船員になるには」特集(笑)をしてみたいと思います。
なお、船にあまり詳しくない方を対象に、できるだけ簡単に(←これが一番難しい汗汗)噛み砕いて書いていきますので、「玄人受け」はしないと思います。そこんとこよろしくお願いします。
また、主に内航貨物船にフォーカスした話になりますし、私自身は現場から離れて長いので、トンチンカンな話になるかもわかりませんが、そんときゃ鋭いツッコミを入れてくださいね。
今回は、まったく未経験だけど、とにかく「船員」になりたい場合
ただ単に、職業として「船員」になるには、そこまで難しいことではありません。
要するに内航海運の会社に応募して。「未経験・無資格ですが、採用してもらえますか?」と言って、「OK」の返事があれば、雇用証明書をもらい、近くにある運輸局や運輸支局・海事事務所で船員手帳を作ってもらい、健康診断さえ受ければ。いっぱしの「船員」として乗船できます。
ただし・・・
船員不足が深刻な今でさえ、「まったく未経験」の場合、ぶっちゃけそこまで求人数は多くありません。その理由は後で書きます。
それでも「司厨員」(要するにコックさん)は、それなりの求人数があり、また、大型船の一部にも未経験者の求人が若干あるようです。
「まったく未経験」と「免状はないけど船の経験がある場合」の決定的な違い
少し専門的になりますが、大事なところなので読んでみてください。
船員さんの労働保護や航海安全、規律を定めている、「船員法」という法律に、
〇部員(免状を持ってない人)が航海当直(要するに船を運航すること)する場合は「航海当直部員」の資格がないとダメよ。とかいてあり、この資格は6か月以上の乗船履歴が必要です。となっています。
また、この法律から派生している「航海当直基準」というルールがあり、船を運航する場合の決まり事が書いてあります。
その一部を簡単に抜粋すると、
〇見張りする人(船はでかいので、進行方向など、あっちこっちを見渡す)と、操舵する人(船を操縦すること)は同じ人じゃだめよ。
〇見張りは複数の人でやってね
〇ただし、操舵位置(要は船のハンドルの場所)で周囲の状況が見渡せる小型船(原則700トン未満)の見張りは一人でいいよ
〇すぐに呼び出せる補助者が船内にいれば、見張りは単独でもいいよ
〇でも当直するのは、最低一人は6級海技士(運航する資格)が必要だよ
って書いてあります。
ってことは、
原則として、船を動かすには、見張り要員2人と操舵要員1人が船の運航をしなければならないけど、
原則700トン以上の船は2人、それ以下の船は1人で航海当直(船の運航)ができることになります。
ただし、最低一人は6級海技士以上の資格を持った人が運航しなければならない訳ですから、一人で当直できる700トン未満の船は、免状を持ってる人しか当直できないことになります。
また、700トン以上の船の場合にも、1人は6級海技士以上の免状を持っている人で、もう一人は「航海当直部員」の資格が必要となります。
ということで、まったく未経験の方を内航船の会社が採用するという事は
1、700トン以上の船を所有し、運航している会社の場合でも、少なくとも6月間は「運航要員」としては使えず、採用しても、運航以外の甲板作業などを経験させたのち、運航要員に養成していく。
2、所有船が700トン未満の船である場合には、海技免状を取得することを前提として採用し、数年間の養成期間が必要
という事になります。
こうしたことから、まったく未経験の方を小型船が受け入れるというのは少なからずハードルが高いため、専門教育機関を卒業した新卒生(有資格者)や、内航船の労働市場の中で採用するケースが多くなってしまいます。
したがって、内航船員の数そのものが減少していることにくわえ、少子高齢化による船員供給量が少ない現状は、小型船のオーナーにとっては大変厳しい環境になっています。
次回以降、未経験の方が船長・機関長資格をめざす方法をご紹介します。
(注意)
船の仕事には大まかに分けて、船を運航する「甲板部」、メインエンジンや発電機などを管理する「機関部」がありますが、今回は「甲板部」の内容だけ書いています。「機関部」の話は次の機会に書いてみます。